離婚協議書の法務相談
離婚条件を有利にする方法や離婚協議書の作成の仕方については多くのご質問を受けています。
お子さんの親権、養育費をどうするのか、夫婦で作ってきた財産、家、マンションのローンはどう分割するのか、こうした解決しなければならない問題によって、離婚が成立しかけていても再び争いが起きてしまうのです。
両方の実家がそれぞれの応援団になって、夫婦の対立が一層深まってしまうなんてこともあります。
夫婦の話し合いのみですべて順調に離婚が成立することのほうが珍しいと言えるでしょう。
話し合いがすんなりとはいかないことを前提にして準備をすすめれば、離婚への難関も乗り越えられるというものです。
言った、言わないの口約束は危険です。口約束は空手形(からてがた)だと思い、最初から離婚条件の案として離婚協議書の作成を提示しておきましょう。急がば廻れ、拙速は避けたほうが賢明です。
実際の離婚協議書作成
当事務所の業務で多いのが、まず奥様が希望の離婚条件を示し、ご主人との意見交換を通して、離婚協議書を作成していくというケースです。夫婦双方の意見をもとに何度かの修正を経て、正式な離婚協議書として完成するわけです。
このように離婚に関する話し合いが書面として残されていくのですから、言った、言わないのトラブルも起きにくくなり、財産分与や養育費支払いの実効性も高くなります。
また、離婚協議書を公正証書にする場合も、しっかりとした離婚協議書ができていれば、短い期間(早ければ一日)で公証人が公証した離婚協議書を作成してくれます。
相手が公証人役場に行きたくないと言って、公正証書にできない場合は、後で不払いが生じたときに財産差し押さえのための裁判を起こさなければなりません。そんなときにもこの離婚協議書が重要な証拠書類になります。
これは内容証明郵便が裁判で重要な証拠になるのと同じです。
離婚協議書のQ&A
Q)離婚協議書を作ったほうがいいと聞きましたが、どんなメリットがあるのでしょうか?(池袋の女性会社員)
A)離婚協議書には、子供の養育費、親権、財産分与、ペットの飼育者、家のローンの支払いといった諸問題について、どう解決するかの条件を記載します。こうした約束を文書で交わすことによって、離婚後のトラブル防止に役立ちます。
Q)離婚協議書は何通作成するのですか?(埼玉県さいたま市の医療関係者)
A)離婚協議書は2通作成し、離婚当事者双方が署名捺印した上で、1通ずつ持ちます。
Q)印鑑は実印でしょうか?(川口市税理士事務所勤務)
A)必ずしも実印でなければならないというものではありませんが、あとあと公正証書にするのであれば、初めから実印を使ったほうがいいでしょう。
Q)離婚したいのですが、離婚を認めてもらうにはどのような法的条件が必要でしょうか?(東京都、女性公務員)
A)法定上の離婚原因は5種類あります。
①不貞行為
②悪意の遺棄
③三年以上の生死不明
④回復の見込みのない強度の精神病であること
⑤婚姻を継続し難い重大な事由
Q)主人に離婚の話をしているのですが、その時の主人の気分で離婚条件がころころ変わります。まとまったら離婚協議書にしたいのですが、この調子ではいつになるかわかりません。いい知恵はないでしょうか?(埼玉県川口市の女性)
A)離婚話はスムーズに進むことのほうが少ないのです。
ですから、話が煮詰まってから離婚協議書を作るのではなく、先にこちらの条件を離婚協議書に書き込んで相手に提示してみましょう。
私の事務所ではある程度、離婚話の方向が見えた段階で早めに作成してお渡ししています。相手は離婚協議書を見て、もう離婚の話に応じなくてはならないと覚悟を決めてくれることでしょう。そして、どうしても離婚をしたいのならばと、自分の条件を提示してくるはずです。
そうやってお互いの意見を交換しながら、まとまった話を離婚協議書に次々と盛り込んでいきます。このような方法をとれば、前回と話が違うといった悩みもなくなるでしょう。
私が離婚協議書作成業務をおこなう際は、内容の訂正、加筆は当然ですので快くお引き受けしています。
お渡しした離婚協議書に何度か加筆、修正を加え、正式な離婚協議書が完成したら、公証役場で公正証書にしてもらうのもよいと思います。きちんとした離婚協議書を作っておけば公証人への引継ぎもスムーズにできます。
離婚はお子様の将来にもかかわる重大事件です。離婚協議書を前に置き、ご夫婦で十分に話し合ってください。
Q)夫との離婚話が進んでいるのですが、なかなか話がまとまりません。そこで、話し合いに決着をつけるためにもきちんと公正証書を作っておこうということになり、先日、夫と公証役場に行きました。ところが、公証人の先生から「ご夫婦でよく話し合って、意見がまとまってから来てください」と言われてしまいました。どうしたらいいのでしょうか?(東京都板橋区の会計事務員、女性)
A)公証人の先生は、公正証書を作ることが主たる業務です。法律相談はOKですが、夫婦の人生相談や愚痴を聞く時間はないでしょう。やはりご夫婦で話し合ったことをまず離婚協議書にまとめ、それを公正証書にしてもらうのが一番スムーズなやり方です。公証役場へ行く前に意見の対立をなくしておけば、公証人の先生も快く公正証書を作成してくれます。
Q)離婚前に公証役場へ行きたいのですが、主人の時間がありません。主人の代理人として行政書士に行ってもらうことは可能でしょうか?(葛飾区、教員)
A)離婚後、つまり離婚届が提出された後であれば、委任状を書いていただくことで代理ができます。しかし、まだ離婚していない場合はご本人の確認が必要ですので、ご夫婦で公証役場に行くことになります。
Q)現在、離婚準備中です。マンションのローンが2400万円残っています。夫が支払い続けると言っていますが、名義は私に変更する予定です。ただ、借り入れた銀行が名義変更を認めてくれないかもしれないので、そのことを銀行に言わない方がいいという意見を耳にしました。実際はどうなのでしょうか?(埼玉県川越市、主婦)
A)ローン借り入れの場合、約款があります。もしご主人がローンを支払えなくなったとき、離婚した相手が請求されます。担保権が設定されているからです。通常は借り入れた金融機関に事情を話し、同意を得てから行動すべきでしょう。
Q)マンションの時価が大幅に下がっています。財産分与のとき、買い値で計算できるでしょうか?(神奈川県、主婦)
A)残念ですが、現在の売り値で評価されます。評価額は、費用はかかりますが不動産鑑定士に依頼するか、不動産屋に頼めば算定してくれます。何箇所かの不動産屋に時価評価してもらう方法もあります。